今年は、私の心元資本社の設立10年目にあたる。当時、私はアーリーステージ投資を始めたばかりで、成功の鍵は最も賢い「アイデア」を見つけることだと思っていた。当時の私は、十分なデータがあれば正しい答えが見つかると信じ、製品や技術の研究に多くの時間を費やしていた。
しかし、私は長年にわたって数え切れないほどの起業家に会ってきたが、彼らの最初のアイデアが元の形から成長した例はほとんどなかった。コンシューマー市場から法人向けサービスに移行する人もいれば、製品を覆してやり直す人もいた。また、あきらめかけているときに新しい方向性を見つける人さえいた。
ここから私が学んだ最初の悟りは、成功や失敗の鍵は決してアイデアではないということだ。
アイデアは、起業家の世界観や思考パターンを覗く窓のようなものだ。例えば、何故この市場を選んだのか?なぜ今がベストタイミングだと思ったのか?さらに重要なのは、どのような問題を見いだし、それをどのように定義しているか。
アイデアはただの起点であり、市場において絶えず修正される。しかし、起業家の世界に対する洞察力と質問の仕方こそが、あらゆる調整の方向性と質を左右する。本当に投資する価値があるのは「完璧な答え」ではなく、その背後にある独自の思考なのだ。
この10年間で、私は市場の力が想像以上に重要であることを深く体得した。製品は常に調整可能だが、市場が小さすぎたり、さらには早すぎたりすれば、最も賢明な解決策も無駄になる可能性がある。起業は孤独な戦いではなく、大きな環境の潮流に流される必要があり、そうでなければ遠くへ行くことは難しい。外部からは技術的に完璧だと思われているチームでも、規模が十分でなかったり、テンポが早かったりするために、市場で負けてしまうケースは多い。
最も重要なのは、企業が遠くまで行けるかどうかを決めるのは人であるということだ。多くの企業が倒れるのは、方向性が間違っているからではなく、起業家が間違いを正すことができず、挫折に耐えているからだ。
例えば、間違った判断を下したとき、起業家は自分を貶め、率直に過ちを認めることができるだろうか?失敗しても立ち上がることができるだろうか?アイデアは調整できるし、市場も選び直せるが、「人」は誠実でなければならない。最後に立ちはだかるのは、往々にして最も賢い人ではなく、自分自身と正直に向き合い、あきらめようとしない人だ。
私は以前、投資は科学だと思っていた。この10年間で、私は投資に標準的な答えはなく、むしろ信頼の問題であることを学んだ。未来は予測できないし、情報は決して完全ではないからだ。不確実性の中でいかに自信を維持し、将来や人生について長期的な視野を持つかが、この10年間で私が学んだ最大の収穫である。